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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第11章 真夜中


時は深夜。

「…ぅ…」

リネルは重い瞼を開け、目をを覚ました。

激しく感じるのは全身の強い不快感だ。
身体中にはべたつく冷や汗、腹痛と頭痛が酷く、何より吐き気をもよおす気持ちの悪さが強い。

奇しくも原因はわかっている。考えられるのはこの家で出された毒が混入された食べ物のせいだろう。
先程までは何ともなかったので 自分はそこそこ鍛えた身ゆえに問題なかったのかと思っていたが、そうは問屋がおろさなかった。
とにかく、この具合の悪さは尋常ではない。

「…ちょ…ダメ、だ…」

じっとしていると余計に気持ち悪さと痛みに気を集中してしまう。リネルはベッドから身体を起こした。
とりあえず外の空気でも吸おうかと、部屋のバルコニーまで這うように進み 窓を開けて何とか外に出た。

「…無理…」

下弦の月が美しい夜だったが、そんなものを感じている余裕はない。リネルはバルコニーの手すりに両手をつき 頭を低くする、なんとか身体を支えていた。

「…死、ぬ…」


そうぽつりと呟いた時、バルコニーの手すりの上に人の気配を感じた。素早く反応出来る状態でもないし 何より会話もしたくない。
下手に話すと食べた物が一気に出てきそうだ。

頭を低く下げたままにしていると、上からは予想通りの声が降りてきた。

「辛そうだね」

「…イル、ミ…死にそう…」

リネルはなんとか小声で返事をした。

イルミはバルコニーの手すりから素早く降りると、リネルの後ろに立つ。リネルの両脇に手を入れ ずるりと重い身体をそっと引き起こした。

「そうやって動き回ると毒が回る。とりあえず座ったら?」

返答を聞かぬまま イルミはリネルをその場に座らせ、バルコニーの手すり部分にもたれかけさせた。


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