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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第76章 妊娠記録⑤終わりと始まり


「…おや…」

部屋の隅にじっと佇んでいたツボネが一瞬視線をズラす。
ようやく本館に戻ったらしいイルミの気配を掴み、それを正確に把握すべく能力を使用する。


「…っ!!」


感ずるものがあったのか、ほぼ同時にリネルが 鋭い声を出した。


「嫌っ…それヤダっ…気持ち悪い、やめて!」

「これは大変失礼を。お許し下さい」


何やら感覚が鋭敏になっているのか 黙って広げた円に対し、キツイ口調で拒絶を呈される。もう一度謝罪を述べ 深々頭を下げた後、ツボネは一旦部屋を去った。

その気配と位置を把握し ツボネが一直線に向かう先は当然イルミの元であった。なんとか間に合ったのだから 声を掛けない手はない。
仕事から帰るとシルバの所でその日の報告をするのが決まりであるから、先回りをして主の部屋の前で待つ。

イルミは大股で歩きながら直ぐにそこへ顔を出す。ツボネは一礼をし、出迎えの挨拶を述べた。


「イルミ様 お帰りなさいませ」

「うん。そういえば産まれたの?」

「いいえ。今もリネル様が頑張っておられます」

「まだ?連絡きてからかなり時間たってるケド」

「個人差はございますが 出産というのはそれだけ大変な大仕事なんですよ」


2、3会話をしていると 部屋からシルバが顔を出した。


「ご苦労だったな イルミ」

「うん」


シルバに仕えて長いツボネには その表情と雰囲気から 何故ツボネ自身がこの場に居合わせているのか、それが十分に伝わっている事を瞬時に理解出来ていた。

ツボネは感謝を込めてシルバに頭を下げた。


「ありがとうございます。それではご報告は後ほどに」

「構わない。イルミ 行ってやれ」

「リネルの所?行ったところでオレに出来る事ないと思うけど」


ツボネは頭を起こす。短絡的とすら言える結果重視のその返答はいかにもイルミらしいと思う。
但し、わざわざそれを促す目的には 違う意味合いも含んでいる。ツボネは諭すように話した。


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