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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第75章 妊娠記録④おねだり


「ちゃんとファミリーネームとのバランスとか字面も意識してね」

「なんか注文多くない?」

「依頼人の要望は叶えるべきでしょ」

「え これ依頼だったの?」

「まさか。でもイルミとはこういう風に話してる方がしっくりくる気もする」


リネルはふふっと笑いながらイルミを見上げ ねだる声を出した。



「ねぇ 撫で撫でして?」



イルミは片手を伸ばしリネルの頭をくしゃくしゃと撫でた。


「…私を撫でてどうするの」

「高さ的にね」

「お腹」

「わかってる」


イルミは掌をリネルの腹に滑らせる。その光景を見ながらリネルは満足気にニッコリ微笑んだ。


「へぇ よく動くね」

「でしょ?早く出たいって言ってるのかも」

「世の中 世知辛いのに」

「え イルミでもそんな事思ってるの?」

「仕事が忙しいってコトは恨み恨まれる人間ばかりの世の中ってことだしね。ま、依頼が絶えても困るけど」

「それで生計立ててるしね」

「キルアもリネルも言う事聞かないし」

「……。でもいざとなったら聞かせるし?」

「まあね」

「わ 聞いた?パパはこわいねー」


リネルはイルミから距離をとる、枕元に置いたままの針を再び手に取り ベッドにドサリと横になった。精巧なオーラを放つ針先を見つめながら静かな声で言った。


「しばらくは大人しくこれを眺めてるだけで退屈しなさそう」

「そう」

「ありがとう イルミ」

「なんかさ」


話を区切り直され リネルはイルミに目を向けた。


「今のリネルはいいね」

「どういうこと?」

「なんていうかオーラも気配も大人しい」

「……隠居したせいかな」

「かもね」

「…でも私らしくはないよね」

「ま、確かにね」


リネルの発言に半端な肯定を示した後、イルミは部屋を去った。イルミのその評価は 何故か無性にリネルには嬉しいものだった。





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