第74章 妊娠記録③羽伸ばし
「証拠はあるの?」
「えっ」
「だから証拠」
現段階ではそんなものは当然ありはしない。イルミはそれをわかっていて指摘をするから、ますますリネルの神経を逆撫でる。
「証拠もないのに決め付けるつもり?大体裁判てうちが過去に訴訟起こされて1度でも負けた事があると思ってるの?名誉毀損罪で逆に訴えてやろうか」
「な、何それ!」
「それに離婚も何も書類上は入籍すらしてないよね、忘れたの?」
「うるさいな…イルミのそういう所がほんっと嫌なんだよ!!」
イルミはリネルの腕を離すと 一歩リネルに距離を詰めよった。
「じゃあここからはオレの質問」
「なに」
「それ誰の入知恵?」
「え」
「急にそんな事言い出すのは誰かの入知恵なんだろ。それかリネル自身がそうだからオレもそうなんじゃないかっていうこじ付け?」
「な、なんでそうなるの!?自分の事は棚に上げるつもり?!」
「だとしたらいい身分だね そんな身体で」
「やだ…っ!」
背中に衝撃が走ると同時に 視界に天井とイルミの顔が広がった。一瞬のうちに床に身体を倒され、残像の如く長い黒髪がふわりと後から落ちて来た。身体の反応の鈍さに自分でも驚きを隠せない、抵抗の間すら感じられなかった。
イルミはリネルに静かに顔を寄せると、掴んだ手首に爪を立て 少し声を低くした。
「まさかと思うけどこの後に及んでまたクロロ?」
「な、そんなワケないでしょ…?!」
「オレがいつまでも大人しく機嫌とってると思ったら大間違いだよ」
「い、痛…離して…っ」