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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第10章 その後


「お部屋はこちらです。ごゆっくりどうぞ」

リネルは使用人に案内され、ホテルなのかと突っ込みたい雰囲気の豪華な部屋に通されたのだった。


「はぁ…………」

ようやく、長い1日が終わった。
1人になると大きな息を吐き、ジャケットを脱いでソファに放った。
自分もソファに倒れるように深く腰掛け、背もたれに体重を預けた。
緊張の連続でさすがに疲れ果てている、一泊させてもらえるのはむしろ好都合だったと感じていると 部屋にノックの音がする。

「……」

誰であるのか、察しはつく。
目線をドアに投げると 予想の人物が静かに部屋の中に入ってくる。イルミは立ったまま腕を組み、リネルを見下ろしていた。

「リネルってさ」

「…なに?」

「もっとポーカーフェイスなタイプかと思ってたけど動揺とか緊張とか簡単に態度に出るんだね。茶会の時もだけど夜もだいぶ引きつってたよ」

「…だって…」

「さっきも言ったけど、常にベストでいないとそのうち隙つかれるよ」

「…………」

とにかく疲れている。このタイミングでの説教は勘弁して欲しかった。
厳しい評価を下すイルミに反論したいところだが、悔しいが全て図星で何も言い返せなかった。
リネルはソファに埋めた身体を起こすと、イルミの顔を見ないまま言った。

「…次からは気をつけるから」

「そうして。ヘマさせるとこっちが迷惑なんだから」

労いの一言くらいあってもいいのに、なんて甘い事を考えるが無駄のようだ。イルミはキッパリ言った後、リネルの隣に腰掛けてきた。

上半身をこちらに向けてほんの少しだけ顔を覗き込んでくる。

「身体は大丈夫?」

「うん。致命傷はないししばらくはオーラを回復に使うし」

「そうじゃなくて、毒のほう」

そういえば、ティータイムの頃から毒入りの食べ物をとってきた。
現時点では体調に目立った変化がないのでつい忘れてしまっていた。リネルは自身の両手を目の前に持ち上げる、それをくるくる動かしてみた。

「うん。何ともないよ」

「意外とタフなんだね」

「意外とって、どういう意味?」

「なんていうか野性味あるなって」

「…………」


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