第74章 妊娠記録③羽伸ばし
キルアと合流し ゴンとの待ち合わせ場所まで向かう送迎車の中、リネルは土産袋の中を見ながら ふとした疑問をキルアに投げ掛けた。
「ツボネさん、お土産用意してくれたのはいいけど こっちの老舗メーカーのお菓子達はいいとしてなんで酒瓶が沢山入ってるのかな…」
「あーそれオレのリク」
「え、キルアが呑むの?人の家で?」
「違う違う ミトさんが。酒好きって聞いてるからさ、ゴンに」
「…そうなんだ…」
初めて会うことになるゴンの育ての親を勝手に想像する。天真爛漫にも見えるゴンを育てたというから 少女のような純朴な女性をイメージしていたが 酒好きとなるとまた印象が変わってくる。
リネルはキルアに探る目を向けた。
「どんな人なの?そのミトさん…私の中で想像が巡り巡って今は女版ジンさんて所に落ち着いてきた…」
「オレはそのジンさんをよく知らねぇから何とも言えねぇけど。うちの母親よりは全っ然いい親」
「…キルアの言いたい事はわからないでもないけどね。キキョウママは私にはよくしてくれてるから 何とも言い難いな」
「リネルは間違ってもああいう親になるんじゃねーぞ」
「…嫁と息子だと立場が違うから評価は難しい所だけどね…」
曖昧に言葉を濁す。何となく、ゆるい曲線を描く腹部をスッと撫でるとキルアの視線がチラッとそこへ飛んできた。
「…もう動いたりすんの?」
「病院で言われたことだけど 動いてはいるらしい。感覚としてはまだわからないけどね」
「付いてた?」
「なにが?」
「シンボル」
「ああ そういう事か…まだわからない」
「へぇ」
「触ってみる?」
「いい 別に」
キルアはふいっと視線を窓の外に移した。興味があるのかないのか 中途半端な態度を取るキルアを横目に見た。
しばらく黙った後、キルアは声を低めて話し掛けてきた。