第74章 妊娠記録③羽伸ばし
予想外の仕事を終えてから帰路につく、ゾルディック家の高級車中にて リネルは大きな息をついていた。
一応は内部整理の目処も立ち ジンの配慮もとい強制命令によりリネルは急遽 明日から休みをもらえることになった。予想外の休暇には 気持ちが前向きに明るくもなる、時間帯の割りには 眠気もなく気分が良い。
それにはジンに励まされた件も起因する、尊敬出来る大先輩の経験談には 勇気をもらうことが出来た。
リネルはふと携帯電話を取り出した。昼間からずっと頭の中に浮かんでいた人物に1通のメールを投げてみた。
無題
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久しぶり!元気?
そういえばしばらく会っていないし たまにはその屈託のない笑顔を見たいと思う。
思いのほか返信は早く、何通か互いの近況報告を兼ねてメールのやり取りを繰り返した。メールの文面からも人柄が伝わって来るし 心がほんわか暖まる。
普段 可愛げのない白黒二色でのみ構成されるメールしか使わないのが 仕事上でもイルミとの夫婦生活の中でも普通になっているし、用件も全てが業務連絡同然の必要最低限事項ばかり。ゴンが送ってくれるカラフルなメールには つい顔がほころんだ。
「!」
ふと出て来たある用件にリネルは眉を上げる。すぐ様その場で発信ボタンを押すと、電話口からはよく知る明るい声が聞こえてきた。
「もしもしリネル?急に電話してきてどうしたの?オレのメールなんか変だった?」
「ううん。ねぇゴン 明日私も一緒に行っていい?」
「え?!一緒に?くじら島へ?」
「うん。邪魔じゃなかったら…お願い!ゴンにも会いたいしくじら島には1度行ってみたかったんだよね」
「んー オレの方は全然いいけど。でもリネル お腹の赤ちゃんは大丈夫なの?ちょっと長旅だよ?」
「今は体調いいし安定してるから大丈夫だよ 気分転換にもなるし。ダメかな?」
「そっか わかった。一緒に行こうか!友達一緒ならミトさんも喜ぶだろうし。招待するよ 遊びにおいで!」
「ありがとうっ!」