第74章 妊娠記録③羽伸ばし
安定期に入ってからは確かに食事がやたらと美味しいのは事実。ある意味図星の指摘でもあり ついムキになり声を大きくした。
横からは 相変わらず笑顔を乱さないパリストンが 当たり前に口を挟んでくる。
「もう、失礼だな ジンさんてば。ご妊娠なさったんですよね?リネルさん」
「え?ええ、はい。そうなんです、」
「現在妊娠6ヶ月目に入った所でようやくつわりも落ち着いて 色々好物の物も食べられるようになったんですよね。もうそろそろ性別もわかる頃かな?僕個人としては性別はどちらでも母子共に元気で 無事に出産を終えてくれればいいかなと思ってます」
「…、」
全ては会話の折に自分でパリストンに話したことではあるのだが、当事者であるイルミよりも状況を詳しく把握しているであろうパリストンには つい唖然とした顔を向けた。ジンからは想像通りのツッコミが入った。
「パリストン 父親はオメーだったのか」
「ちょっとジンさん!そんなわけないじゃないですか!」
「リネルさんてばそんなに全力で否定することないのに。傷付くな」
「オメーら2人のあのデマはあながち間違ってもいなかったんだな」
「えぇえ?!なんですか デマって?!」
「過去には副会長まで務めていた重役であるパリストンが まだ若手ハンターのリネルを側に置くにはそういう事情があるんじゃねえかって噂」
「はあ?!なんですかそれ!」
「あはは ジンさん程の方がそんな噂を信じてたんですか?僕は純粋にリネルさんの能力を買っていて、どうせならパートナーは綺麗な女性の方がやる気も出るなってだけの話ですよ」
「本心なのか冗談なのか下心があるのか、どれなんだそりゃ」
「その全てかもしれませんし、どれも当てはまらず正真正銘 彼女に本気かもしれません」
「チョット、何言ってるんですか……」
「突き詰めて考えるとその辺はわからないものですよ」
パリストンはクスクス意味深に笑っている。
付き合いも長いのでこの上司のやり口は読めてくる。やたらと会話を引っ張るパリストンの意図は何と無くわかるが、肝心のジンはあっさりその芽を詰んでしまう。