第74章 妊娠記録③羽伸ばし
ハンター協会本部。
リネルは今日もパリストンの側でパソコンをカタカタ叩きながら業務をこなしていた。
「ああ 大変です!」
「……ビックリした どうしました?」
急に声を上げるパリストンに目を向けると、本人は真面目な顔でその要件を説明してきた。
「忘れてました…今日は本協会の内部監査があるんです。これから厳し~い監査員がお見えになるんですよ」
「え?!マズいじゃないですかそれ」
「そうなんです なかなかに目の光る方なので簡単に言いくるめられるとも思えませんし」
「ど、どうしましょう!とりあえずヤバい書類は急いでシュレッダーかけないと」
そんな会話をはじめる頃には 時は既に遅く、後ろからはある気配が静かに近づいていた。
「ようご両人。いかにも怪しさプンプンて感じだな」
「…ジンさん…?!また絶で近付いて…っ」
後ろから突然顔を覗かせるのは ハンターとしては大先輩にあたるジン=フリークスだった。久々にみる顔にリネルは目を大きくし、パリストンは崩れぬ笑顔のまま 頭を掻いていた。
「これはジンさん 予定より随分お早いお着きですね。割りとお暇なのかな?」
「暇なワケあるか。監査委員なんて雑用仕事にこき使いやがって ジジイ共め」
「その割には随分とやる気満々じゃないですか」
「予定通りの時間に来たんじゃ対処もカバーも出来るんだから意味ねぇだろ?」
「もう、我々が黒みたいな言い方しないで下さいよ」
「オメー真っ黒だろパリストン。リネルはグレーってとこか?」
「えっ 何でですか」
椅子から立ち上がりムッとした顔をジンに向けた。ジンの視線はリネルの腹部に飛んでいた。
そういえば、主だった人物には妊娠報告をしたが ジンにはまだ話をしていない。なんと言うかを一瞬考えた隙に ジンの方から指摘をされた。
「随分太ったな 結婚して幸せ太りか?」
「え?!違いますよ!」