第73章 妊娠記録②事実報告
キキョウはキュンキュン音を出しながら首を左右に振り、使用人に問いかける。
リネルは、物凄い剣幕で話すキキョウの両腕を強めに掴み 声を張った。
「あの!聞いてないんですか?」
「聞いたわよ 子供が欲しくて悩んでるからわざわざ相談してくれたのよね。大丈夫よなんとかするわ」
「違います!イルミから!!……その、妊娠したって」
「え 」
「私が、…妊娠したってことイルミから聞いてないんですか?」
「リネルちゃんっ!!!!!」
「ぐぇ………っ、」
甘く芳醇な香りのする貴婦人にこれでもかと抱き締められる、そして口からは潰れた蛙にも似た声が出た。
その力は 内蔵に圧迫感を覚え、骨に振動が走る程に凄まじく 酸欠になりそうになる。
当のキキョウ本人は歓喜の雄叫びをあげていた。
「リネルちゃん!ついにおめでたなのね!?!?」
「えと、その……」
「良かったわねえっっ!!!」
「ぐっ、ぐるじい…です」
もがくリネルからキキョウはパッと身体を起こす。そして紅い唇をごく自然にリネルの頬に寄せてきた。
「おめでとう リネルちゃん」
女性からそんなことをされるのは初めてで、何やら照れ臭い気持ちになった。
「本っっ当におめでとう リネルちゃん!」
「…ええと、ありがとう、ございます」
形式的にそう返す。本人達の何倍もの大喜びしてくれるのならば少しはよかったとも思えてくる。下手な笑顔をキキョウに見せていた。
「もう それならそうと早く報告してくれたらいいのに。おめでたいビックニュースねぇ ゾルディック家にいよいよ孫が出来るのね。早速パパにも話しておかなくちゃ!じゃあね、リネルちゃん御機嫌よう。御自愛なさいな」
キキョウはまくし立てるように話した後、さっさと部屋を出て行ってしまう。