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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第73章 妊娠記録②事実報告


「ねぇクロロ…」

「なんだ」

「私ね、その、」

「どうした?」

「私…………、」


クロロは横目でリネルを見定める。さっきはすらっと言えた言葉、今回も案外と 口からスルリと出て来てくれた。



「私、…妊娠したの」



クロロの視線がはっきりこちらに向くのを感じた。


「そうか」

「うん」

「おめでとう、と言えばいいのか?」

「わかんない…」

「一般的にはそうだろう」

「自分でも、おめでたいとも、正直思えてないし…」

「妊娠、か」

「うん…」

「何というか、」

「ん…?」

「複雑な気持ちになるもんだな」

「そう…?」


「イルミの奴を殺してやりたくなってきた」

「せめて慰謝料を請求してからにして」



どこまで本気かもわからないが、警戒レベルなクロロの言葉に 溜息が出た。


「ねぇクロロ」

「なんだ」

「私、色々わからないの…」


クロロの視線を頬に感じながら リネルは胸中を口にする。


「子供が欲しかった訳じゃないし、今だって不安とか心配ばっかりだし。仕事だって思うようにいかなくなるっていうのに、イルミは全く他人事って感じで。私ばっかりが我慢や苦労が多くなる」

「そうは言っても自分で蒔いた種だろう。…いや、蒔いたのはあの野郎の方か」

「茶化さないで」

「正論だろ」


大きく息をつく。一週間前イルミの部屋で話した会話を思い出し、ぽつりと弱々しい声で話した。


「……私、全然今の状況を喜べてないのにね?この前イルミがいらないなら降ろせばいいって簡単に言ったことが何でなのか めちゃくちゃ頭に来て。なんて無責任なんだろうって。…でも実際は私だって頭ではそれを考えなかった訳じゃないのに…。
でも今日病院で調べてもらったり、職場でもちょっと励ましてもらったりしたら、何と無く頑張れるような気もしてきて。…結局のところ、自分でもどうしたいのか、全然わからなくて……」


クロロは無言のままだった。



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