第73章 妊娠記録②事実報告
イルミに話した時と同じく、クロロからどういう回答が欲しいのか具体的にはわからない。
ただリネルにとってクロロは幼い頃から1番の相談先であり、最も頼れる相手である。当たり前に肯定的なアドバイスを待っているのが本音の所かもしれない。
黙るクロロをちらりと見る。クロロは瞳を俄かに閉じ、冷たい声を出した。
「無理な話だな」
「え」
「お前は何を期待しているんだ?」
「………」
そう言われると何と上手く説明すればいいかわからない。今度はリネルの方が黙ってしまう。
「今お前が感じている 不安や迷い、少しの喜び、戸惑い、憂い、わずかな期待……そういった感情をイルミに共有させたいのか?」
「え…」
「第一だ、男の方には何の変化もないのに微妙な気持ちや心情を汲み取り思いやれって?」
「…」
「まぁ元来そういうことが得意な奴もいるだろうが。依頼があれば眉一つ動かさず誰でも殺すゾルディックの人間にそこまでの人情が備わっているとも思えない。」
「…」
「それをわかってて結婚したんだろ?今更ヒューマンドラマを強要する方がおかしいと思うが」
「……どうして」
「なんだ」
「……クロロ、どうしてイルミの肩持つの」
「そう聞こえたか?客観的にはそう見える。と言ったまでだ」
「……クロロなら少しは、私の気持ちわかってくれると思ってた」
悔し気に言う。ただ時系列を交えてのクロロの意見は さも正しく聞こえてくる。
“元々結婚前から仕事含めて今まで通り”
そういえばイルミも先日似たような事を言ってはいた。クロロの言葉であればストンと胸に落ちるのだから、尚更今日は甘やかして欲しかったと思う。
クロロの話は先へ続いた。