第73章 妊娠記録②事実報告
「…仕方ありませんね。考えてはみます」
「え……ホントですか?!」
「ええ。まぁ 貴女とは長年一緒にやって来た仲ですし」
「あ、ありがとうございますっ!!」
一旦は上げた頭がまた自然に頭が下がる。不安だらけの暗中模索の中 慣れた仕事を条件付きで続けられるのは、素直にありがたい事である。
合理的でいざとなれば容赦なしの上司であるが 柔軟な所もあるではないか、心で賞賛を送る。
そんなリネルの胸中を笑うようなパリストンの含みある声が 上から聞こえてきた。
「………まぁ 考えようによってはデメリットばかりではないかもしれません」
「え」
「ハンター界はまだまだ男性の多い社会、ジェンダーフリーの前例を作って頂きそれを縦に政府に意見出来るパイプを掘っておくのも手かもしれませんし。資金も相変わらず厳しいので これを機に新規市場参入、思い切って芸能界を使い 例えばハンターママなんてアイドルを兼業していただき リネルさんへのスポンサー募って荒稼ぎするのもいいかもしれません」
クスリと笑みを漏らしながら カップを傾けるパリストン。一気に 感心にも呆れにも似た感情を抱き、リネルは怪訝そうに口にする。
「……ホント狡猾ですよね。一頭どころか二頭も三頭も得ようとしてるじゃないですか…」
「貴女と一緒、僕だってハンターですから。転んでもただで起きるわけにはいきません」
パリストンが口にしたのはほんの1例、頭の中では逆境をチャンスに変えるべく その何倍もの提案を浮かべていそうである。頼りにはなるが敵には回したくない人物であると改めて思い知らされる。
張本人はいつの間にか普段のにこやかな顔を見せていた。