第73章 妊娠記録②事実報告
「改まってどうされました?」
「ええと、」
「まさか、昨日納期で依頼していた念能力者の系統別地域分布率の計算が狂ってた とか?」
「いえ。実はですね。…その、妊娠が発覚しまして…」
「え」
「今はもうすでに3ヶ月目に入っているらしくて、ですね…」
案外すんなり言えたのは先程のレオリオのおかげかもしれない。
自分の言葉でそう言えたことで 少しは身体の中で起きている事実を認められた気がした。
ティーカップを口元に当てたまま ピタリと動きを止めていたパリストンが 不自然な程に綺麗な笑みを目元に貼り付けていた。
「ご冗談でしょう?」
「まさか。冗談で休日にわざわざこんな事言いに来るワケないじゃないですか」
「お仕事どうされるんです?」
「ですから今日は、その相談に…」
腹の中では微塵も笑っていない完璧な作り笑い、まさにこの人物に相応しい表現だと思う。
「ちょっと待って下さいよ え?なんですか、僕達コンビ組んで何年だと思ってるんです?リネルさんが旦那様と出会うずーっと前から仲良くやってたじゃないですか」
「それは、そうですけど」
「その僕に相談もなしに妊娠ですか?」
「え、相談の義務ありますか?」
「大体子供が欲しいと思っていたならどうしてまず僕に言わないんですか!」
「なんか…おかしくないですかそれ?それに別に…欲しいと前々から思ってたワケじゃ…」
「ならきちんと避妊しましょうよ。セックスライフは綿密な家族計画基盤の上に成り立つものじゃないですか!」
「は?!そんなとこまで首突っ込まないで下さい!てゆーか結婚祝いにあんなものプレゼントしておいて何言ってるんですか?!」
「避妊薬でもプレゼントするんでしたね 10年分くらい」
「いい加減にして下さい!」
手の平を額に当て ハァと溜息をつくパリストンは 一つの咳払いを噛ませてから言う。