第73章 妊娠記録②事実報告
「…レオリオ ありがとう」
「おっ 久々に笑ったな。やっぱ女の子は笑顔が1番!」
「…レオリオってさ」
「なんだよ」
「恋人いないの?」
「それに関しては前々から言ってるよな。誰か紹介してくれよマジで」
レオリオはずいっと身を乗り出し 今日1番真剣な剣幕を見せる。ついクスクスと笑みが溢れる。
リネルも前屈みになり、レオリオと目を合わせた。
「今日は、…来て良かったかも。ちょっと元気出た」
「そーか そりゃよかった」
「レオリオっていい父親になりそうだよね」
「今更かよ 気付くのが遅ぇんだよ」
額にピシッと弱いデコピンが飛んで来る。
レオリオは机の引き出しから一冊の書籍のようなものを取り出し リネルに手渡した。
「なにこれ?」
「母子手帳ってやつ。名前くらいは知ってんだろ?戸籍やら何やらで引っかかって、ちょっと知り合い筋から裏ルールで手に入れた」
「……そっか。ありがとう……」
確かにそういったものの存在は知っている。だが まさか自分で手にする日が来ようとは今だに信じられなかった。ぽかんと口を開けたまま 手元の優しい色合いの手帳を見ていると、不安しかなかった先の展開に小さな光が見えるような気もした。
前向きに支えてくれるレオリオに感謝の思いが込み上げる。
「1人で抱えんな。迷うのも不安になんのも初めての事で当たり前なんだしよ 辛くなったらもっと回りを頼れよ」
「…うん」
「愚痴でも悩みでも相談でも 何でも聞いてやるから辛くなったらいつでも来いよ。あ、ノロケはあんま聞きたくねぇけどな」
「それはないから大丈夫」
早口で返す。レオリオはそれを笑い、握った拳を差し出してくる。
「踏ん張れよ」
「…うん」
そこに己の拳をコツンと合わせ、小さな声で返事を返した。