第9章 お茶会
次なる部屋は両開き扉の中、これまた偉い豪華な雰囲気だ。
「まあ いらっしゃい。お待ちしていたわリネルちゃん」
ティータイムの会場となるらしい場に顔を出すなり、キキョウはリネルに素早く駆け寄ってくる。
「あらヤダ 傷だらけね……可愛らしいお顔が台無しだわ」
「大丈夫です。こちらこそ大変貴重な経験をさせてもらいました」
「そうかしら……もう、あの人ってば加減を知らないんだから」
「わざわざ手当てまでしてもらいましたし大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」
心配そうな声を出すキキョウに リネルは笑顔で返事を返した。
「こちらへどうぞ」
「あ、はい。ありがとうございます」
使用人に指定された席につく。
リネルは部屋をくるりと見渡した。
先程の無機質な印象の訓練部屋とは全てが真逆と言える。テーブルクロスからシャンデリア、飾られる絵画に骨董品まで 一応は目の肥えたハンターであるリネルから見てもどれも素晴らしい品々であった。
この場の空気に全く引けを取らない豪華なドレスを纏ったキキョウは、華奢な両手を合わせて言った。
「さあ 楽しいティータイムにしましょうね!」
部屋にある大きなダイニングテーブルには 食べるのが勿体無いと言うに相応しい煌びやかなスイーツが並んでいる。テーブルの横では使用人が香り高い紅茶を用意していた。
「どうぞ、お召し上がりください。」
リネルは目の前に置かれたのは、金の装飾があるティーカップに入った紅茶だ。上品な香りと綺麗な黄金色をした紅茶に 本当に毒など入っているのかと問いたくなる思いだった。
「では いただきましょう」
キキョウの声を合図に、キキョウとリネルの隣に座るイルミはさも自然な動作でティーカップを口に運ぶ。毒入りだというお茶を平然と喉に流すイルミを横目で観察した。