第72章 妊娠記録①一年後
「なんか顔色悪ぃな」
「そう…?」
レオリオはすぐさまリネルの顔色を指摘する。ハンターとしてはどこか頼りない部分はあるが さすがは資格を有す医者だけあると感心した。リネルはここ数日の様子を素直に話出した。
とかく気分が悪く胸焼けがして 何より食欲がない。肌もいつになく荒れるしぼーっとしてやる気が出ない。
言い出すとキリがない思いで、茶化すように 「連日飲み過ぎで胃がやられてるのかも」と笑って見せた。
「その、なんだ…女の子にこういう事聞くのはアレだが………」
「ん、なに?」
「リネルちゃん 生理きてる?単純におめでたなんじゃねーの?」
「…え…」
レオリオの口から出た言葉にリネルの顔が固まる。
仕事柄生活が不規則で生理周期は乱れる事もしょっちゅう、少しも気にしていなかった。妊娠の可能性は微塵も疑っておらず 空いた口が塞がらなかった。
「一回調べたら?市販の検査薬とかうちの病院でも検査出来るし。違ったら違ったで原因調べないとマズイしよ」
「……」
表情を強張らせたままじっと膝に目線を固めるリネルを横目で見ながら レオリオは声を明るくした。
「でもさ もしそうだったらめでてーじゃん!いいよなぁ~結婚して子供出来てって順風満帆!」
「…一般的には、そうだけど…」
「なら暗い顔すんなよ!決まったワケでもねーし」
「…………」
「おい、まさか……他の男の…なんてオチはねぇだろうな…」
レオリオは 当事者かと言いたくなるほどオロオロ焦った顔をしだす。リネルは首を小さく左右に振る、そしてますます頭を下げる。
横からさらさら落ちてくる髪がリネルの表情を隠した。
「もし本当だったら……どうしよう」
仕事もある。ゾルディック家は特殊。イルミもまた少し特殊な気がする。何より流星街出の自分は親子というものを知らない。
不安。リネルが一番に感じたのはそれであった。