第8章 手合せ
1人部屋を去るシルバと入れ違いに、執事が一人やってきてリネルの目の前で挨拶をする。
「初めまして。ゾルディック家執事でございます。早速ですが、お傷の手当てをさせていただきます」
「え?…あ、ありがとうございます」
こんな所まで至れり尽くせりとは戸惑うものの、イルミはまるで我が物顔。まったく異なる話題を持ち込んでくる。
「リネルの動きってあんなもん?身体なまってるんじゃないの?」
「……ん、最近雑務続きで派手に動いてないし」
「常にベストなコンディションでいないと足元すくわれるよ」
労いもないイルミの言葉は、ごもっともとも言える。悔しいがその通りだと認めざるをえなかった。言い訳にするつもりはないが、仕事仕事では鍛練が疎かになってしまう。今日はある意味、良い機会だったのかもしれない。リネルはふわんと微笑んだ。
「…でも うん。いい経験になった。あのレベルの人とはなかなか闘えないし」
「真面目に闘ったらその程度の傷じゃ済まないケドね」
本当に、イルミの言うことは至極ごもっともだ。鼻先でそれを笑ってみせた。