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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第70章 ゲシュタルト崩壊/イルミ流血あり


時は深夜。明日はようやく休みである、リネルはすぐに目を閉じた。毎度のことだが詰め込まれた仕事は只管忙しい訳で くたくたに疲れた身体をやっとこ大きなベッドに沈めた時だった。

ごとり、と隣から聞き慣れぬ音がした。音源はもちろん部屋の主であるイルミだが今の今まで気配はなかった筈だ。
不審な音はそれ以降聞こえない。何が起こったのか気にならない訳ではないが せっかく倒した重い身体を起こす事を億劫に思う。
イルミの部屋を覗いてみるべきか。頭の中で二択する。


「…はあ…」


多少なり気になっているから今の瞬間もせっかくの睡眠時間を無下にしているのだ。それに気付いてしまった以上はベッドから身を起こし、イルミの部屋へ向かってみるしかない。


「イルミ?帰ったの?」


何度かノックを繰り返したが返答がなかった。気配は明らかに部屋の中にあるのに 応答がないなんてことは過去にも初めてで、少しだけ妙な予感がした。


「………開けるよ?」


細い声で言い、ドアを開ける。異常な光景を目の当たりにし、不審音の原因を一瞬で理解した。

部屋の片隅で壁を背に座り込むイルミの姿を捉えた。不自然に腹を押さえるイルミの掌は真っ赤に染まり、周囲の絨毯は血塗れの蛇がぐるりとのたうち回ったようにどす黒く汚れている。イルミの回りには血溜まりが出来るほどだった。
力なく視線を泳がせていたイルミの瞳がこちらへ向けられる。
リネルは急いでイルミへ近付いた。


「どっ どうしたの?怪我したの?」

「ちょっとね」

「ちょっとってレベルじゃないよ これ!」

「掠っただけだよ」

「ウソっ!!…とりあえず、止血…」


仕事上、最低限の応急処置は心得ている。猫のように身を跳ねさせ自身の部屋から救護箱をひったくり走りながら中身を物色した。ガーゼ、包帯、消毒液、その他諸々、一通りの物は揃っている。


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