第69章 休日デート/ほのぼの
クロロは2人をからかうように低く笑いながら はっきりとリネルの名を呼んだ。
「リネル」
「へ…?」
「今後コイツとケンカでもしてどうしても困ったらオレに連絡しろよ」
クロロはイルミをスッと一瞥した後、リネルに笑顔を向ける。
「身寄りもないんだし困った時に頼る所くらい欲しいだろう?」
「ん、まぁ、…心強くはある…」
「なにせお前の初恋はオレだしな」
「なっ…ちょっ、クロロまで!何言い出すの!!!」
派手に驚くリネル。
その異様なまでの動揺ぶりに イルミの視線が痛く刺さる気がした。
クロロは クスクス笑いながら これはイルミ含め公認の事実だと話した後、イルミに話し掛けた。
「イルミ」
「なに」
クロロはちらりと後ろを振り返る、少し離れた場所にはリネルもよく知る幻影旅団メンバーの姿があった。
「こいつはオレらの大事な仲間、可愛い妹分なんだ。大事にしろよ」
「言われなくても」
「よろしくな、リネルを」
「何それ、何様のつもり?」
クロロはそれには答えぬまま リネルに言った。
「じゃあな、リネル」
「あ、…うん!」
クロロはそのまま踵を返すと颯爽と仲間達の元へ去る。
リネルはその後ろ姿を見送る。見慣れた背中が妙に尊大にも見え つい目を奪われていると 隣からイルミの冷やりとした声が落ちる。
「何見惚れてるの?」
「え、違うよ!!」
クロロの大人な態度とその安心感、もしも自分に兄でもいたらあんな感じなのだろうか。
頭でそう答えた後 リネルはイルミを見上げた。
「……イルミが羨ましい」
「なにが」
「兄弟がいて」
「答えになってないよね」
早口で言うイルミ。
正直自分も否定は出来ない。当の本人は知ってか知らずかわからないが、イルミはヤキモチ妬きであると思う。
それを目の当たりにすると少し嬉しくもあり つい笑顔になる。
それからリネルはイルミに告げる。
「…そろそろ帰ろっか、家に」