第69章 休日デート/ほのぼの
「リネルも知っての通り跡取りはキルだからオレには子供が必要ってワケじゃない。キルが家業継いだ後に補佐出来る人間が増えるって意味ではいい事だとは思うけど」
「ん…そっか…」
「おかしい?」
「いや。…打算的だなぁと思って」
私情ではなく あくまでもゾルディック家においての損得で物事を考えるイルミらしい回答だと思う。
必要性は必須ではないとの回答にホッとする反面、その答えがどこか冷たくもリネルに映る。つい下を向き言い黙っていると、イルミの声が上から落ちる。
「仕事したいでしょ。リネルの意思を優先していい」
「私の、意思…?」
「母さん達の言う事は流しておけばいいし」
言い直されるとそうとも取れる。リネルはホッとしたように少し笑顔を見せた。
「…ありがとう。正直安心した」
「ちゃんと避妊しないとね」
「うん。そ、だね…」
リネルは少し身を乗り出すと イルミの顔をじっと覗き込んだ。
「なに?」
「……」
大きな黒目も綺麗な黒髪も、どこか中性的な雰囲気と時折見せるその仕草は母であるキキョウによく似ていると思う。
親子というのは自然と似るものなのかと、リネルは見た事もない自身の親の姿を想像した。
「…今はまだ想像すら出来ないな」
「なにが?」
「その、だから。親になるって事を、…」
「そういうのってなろうと思ってなるもんじゃないんじゃないの?」
リネルはイルミの頬に片手を伸ばした。振り払われることはなく、柔らかなそれを軽く引っ張ってみた。ふっと笑顔を浮かべた。
「でももしもいつかそうなるとしたら…私、イルミによく似た女の子がいいな」
イルミは顎先をスッと持ち上げリネルの手をやんわり振り払うと 細く息をついた。
「リネルこそ打算的」
「…ばれた?」
「オレに似ていた方が一般的に考えて親親族は喜ぶし、女なら才能がなくても他に応用も効きやすいし、世襲も回避されやすい。そんなとこ?」
「ピンポーン。だってリスクはなるべく回避すべきだよね」
「まあね。それは同感」
「イルミに似ればキキョウママみたいな美人さんになるしね」
「口煩い所まで似ても困るけど」
イルミに笑顔を見せた後、リネルは再び 外の景色に目を向けた。