第69章 休日デート/ほのぼの
「ほら。見て」
イルミは片手で摘むようにして 携帯電話の画面を子供に見せた。
そこから流れる音から察するに 何やら子供向けのアニメ動画である事がわかった。
「…、…っ…っ…ひっく…ッ」
「イルミすごい 泣き止んだ」
泣いていた子供は徐々に泣き止むと 涙目のまま携帯画面を見つめる。イルミは静かに問いかけた。
「親は?」
「…ッ…おかいものに、いった」
「親探しにそこまで歩こうよ」
「…ママに、ここをうごいちゃダメって、いわれたの」
ぽつりぽつりと質問に答えた後、子供は上目遣いにイルミを見つめ弱々しい声を出した。
「…っ……ねぇ、」
「なに」
「…ミルメイクのお歌が見たい……」
「なにそれ、今そういうの流行ってるの?」
イルミは次なる動画を検索し出す。リネルはその様子を感嘆の表情で見ていた。
「ナユごめんね、お店すっごく混んでて!」
「ママあああぁ~~!!!」
後ろから聞こえた高い声と駆け寄る足音に、ナユと呼ばれたその子は泣きじゃくりながら向かって行った。
母親らしい女性は ナユを抱き締めながら、丁重に礼を述べてくる。
リネルが 私は特に何もと返事を返していると、ナユは少しだけ振り返り 涙目をイルミに向けた。イルミもそれを見返した。
「なに?」
「……ミルメイクは、お友達もみんな知ってるよ……」
「そう。勉強しておく」
「……ありがと、おにいちゃん」
母親は再び丁重に礼を述べた後、ナユを抱き上げ二人の前を去って行った。