第69章 休日デート/ほのぼの
昼下がり。
それ以降は幻影旅団に会うこともなく一通りパーク内を回り終えた。ふと、リネルは足を止める。園内の賑わう雑音に混じり 遠くで小さく聞こえる子供の泣き声を耳に拾った。
「うぇーん…ママぁ…」
「子供が泣いてる。イルミ聞こえる?」
「聞こえるよ」
「迷子かな?」
「さあ」
興味がなさそうに言うイルミに ちょっと見てくると言い残し、リネルは声の方に駆け寄った。
メイン通りとは少し離れた細い道の木の下で小さな女のコがグズグズと泣いている姿を見つけた。膝を折ると優しい口調でその子に声を掛けた。
「迷子になっちゃったの?」
「うえーん…うえーん…」
「ママは?」
「うえーん…うえーん…」
「…困ったな…」
どうにも会話にはなりそうもない。
さすがに放ってはおけないし、こういう場合は迷子センターに連れて行くべきかと考えた。幸いにもここからはそう遠くもない。明るい声でその子に言った。
「ママ探しに行こうか!おねえちゃんとちょっとそこまで行こう?」
「うえーん…うえーん」
「ねっ?」
顔に両手を当てながら啜り泣く子供の手首をそっと掴むと、その子は思い切りリネルの腕を振り払った。
「うわああああん!やだあぁ!!ママあぁ~!!」
「大丈夫だよ。ママ探しに行こ?」
「うわああああああぁぁん!!」
派手に泣き出す子供の声にリネルは困った顔をする。いつの間にか真後ろに迫るイルミの気配と共に呆れた声が降りてきた。
「余計泣かせてどうすんの」
「…だって、…」
目の前で泣いている子供をさすがに放ってはおけない。しかしリネルの心情とは裏腹に子供はますます大きな泣き声をあげた。
「うわあああああぁん!!ママあぁー!!!」
「…抱っこして無理やり連れてっちゃおうかな」
「人多い場所で誘拐とか騒がれたら面倒だよ」
「そしたら…説明すれば」
「そういうの目当てで親がわざとここに残している可能性は?」
「…でも、」
「ほっときなよ」
「…ほっとけないよ」
イルミは 困り顔で子供に話しかけるリネルを見下ろしながら 小さな溜息をつく。
そしてリネルの隣にスッとしゃがみ込んだ。