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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第69章 休日デート/ほのぼの


「……今日じゃない日がいいな」

「ならいつがいいの?」


頭に思い当たるのはもっともベタであろう1日のみ。

結婚記念日と一緒がいいと答えると リネルがいいならそれでいいと返答される。リネルの顔に笑顔が戻ってくる。イルミはリネルに一つの提案を投げた。


「じゃあリネルの一歳の誕生日に家でも建てる?」

「………えっ?」

「指輪もだけどさ。結婚したら普通家買うんじゃないの?」


イルミはそれに補足を付ける。
仕事の都合上 今の家を出る気はないが、広大な山の敷地内であれば欲しいならば別邸を建てるくらいは譲歩の範囲だろうと話して聞かせた。
それがぬいぐるみとの対価だと言いたいのか随分と突拍子もない事を言い出すイルミを リネルはぽかんとしながら見つめた。
イルミの事であるし冗談ではなく本気の話なのかもしれない、リネルもついつい真面目に答えを返す。


「ありがとう。気持ちは嬉しい。…でも家はいらないんじゃない?…ほら、今のお家で困ってないし」

「そう?なら何が欲しいの?」

「ん~…急に言われてもなぁ…」


周りをくるりと見渡すと 少し人が並んでいる近くの売店が目に入った。そういえばここのアイスクリームは雑誌でも取り上げられる程に絶品だとの事を思い出す。


「…じゃ、アイスがいい」

「そんなのでいいの?」

「うん。『誕生日を作ってもらった』って事だけで十分嬉しいし」

「リネル欲ないね。仕事の話ってなると金銭面は貪欲なくせに」

「それはイルミに言われたくない」


欲がないわけではないと思う。
たまにはイルミを独占もしたいし甘えもしたい。ただそれをどううまく伝えたらいいのか、伝えた所で素直に甘えるなど出来るのか、そして何かと家や仕事の事ばかりを考えているイルミに理解の余地があるのかがわからない。

ただ今日の休日は同じ時間を共有出来ているのは確か。
アイスクリームを頬張りながらそんな事を考えた。


「ハイっ 一口あげる」

「いらない」

「美味しいよ~」

「いらないって」

「いいから、ね?」


無理やりにアイスクリームを差し出すと 迷惑そうに瞳を細めながらも少しだけそれを口にするイルミを満足気に見つめた。


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