第69章 休日デート/ほのぼの
クロロの予想通り2人は微妙に険悪な雰囲気の中にいた。
「あいつら幻影旅団だよね、何してたの?」
「私が聞きたい。イルミこそ何してたの?」
「言われた物買いに行ってただけだけど」
何事もなかったかのように言うイルミに先程の子は幻影旅団だと言えば、当然の如く知っていたと回答を返され それがますますリネルには面白くなかった。
イルミの性格を考えれば顔見知りというだけでプレゼント同然に物を買ってあげるとは考えにくい。
あり得ないとは思いつつも リネルは低い声で言う。
「…もしかしてあの子が今日誕生日だからプレゼントあげたとか?…」
「そうなの?てゆうかそんなのオレが知るワケないだろ」
イルミは目頭を詰めるリネルを呆れた様子で見下ろした。
「たかがぬいぐるみ一つで何をヘソを曲げてるの?」
「……」
「あのぬいぐるみがそんなに欲しかった?」
「……別に。あれ人にあげるお土産用だし」
うまく感情を伝えられぬまま リネルはふいっと目線をそらせた。
目の前で思い切り拗ねているリネルは 子供のようにも見えてくる。ここまでわかりやすいと呆れを覚える気分だ。イルミは少し考えてから言った。
「じゃあ今日をリネルの誕生日って事にして何か買ってあげようか」
「え…っ」
「こういう機会ないとなかなか出来ないし」
「…誕生日…?私の…?」
「うん」
出生不明の自分とは無縁の誕生日なるその言葉に、リネルの眉がふわりと上がる 頬に小さな熱を感じる。物云々よりも、その提案が嬉しくなる。
「誕生日か…」
少し考えてから小さく下唇を噛んだ。
今日と言うと先程のシズクの顔が浮かぶ。勝手にヤキモチを妬いているのは自分の方ではあるが これから毎年この日にそれを心の隅に思い出すのは若干複雑ではある。