第69章 休日デート/ほのぼの
しばらくシャルナーク達と話した後、リネルは近付く気配に顔を上げた。それと同時に目の前の合成写真のような光景を見て、目と口をぽかんとあけていた。
イルミの後ろ隣に例のシズクの姿。
先日はクロロの隣に立っていたその子が今度は何故イルミの横に立っているのかが解せない。シズクはリネルに気付くと、忘れもしない独特な雰囲気のある口調で声をかけてきた。
「あ、リネルさんだ」
「ど、どうも…こんにち
「そっか思い出した。あなた前の仕事の時にいた人だ」
リネルが一応挨拶を返すが シズクはそれを待たずにイルミに話かける。イルミはそれに二言三言応じながらも 観察するように目線はしっかりリネルに落とす。お互いがお互いを、疑いあっているようだ。
ベンチに腰掛けていたシャルナーク達がシズクに近付いた。
「あれシズク、他の奴は?」
「マチどこ行っちゃったのかな、待っててって言ったのに」
「何してたか」
「お買い物してた」
「金持ってたのか?」
「持ってないよ」
このマイペースな旅団のお姫様は悪いがどうにも苦手だった。視線をそらせていると、リネルの前にシャルナーク達が近づいて来る。
「リネル?どーしたの?」
「何でもないよ…」
「あ、また何か団長に伝言でもある?」
「え…ないない、特にない!」
思い切りじっとり感じるイルミの視線が痛い。適当に誤魔化していると 彼等はそろそろ一旦集合の時間だと言い、背を向けて歩き出した。
途中、フィンクスはシズクが胸元に抱いているぬいぐるみに目を向けた。
「どーしたそれ、盗ったのか?」
「盗らないよ。今日はそういう約束になってるし」
「?…金なかったんだろ?」
「あ、そうだ」
シズクはくるりと振り返る。
すでに背を向け歩き出しているリネル達に駆け寄ると、割り込むように二人の間に入り、イルミに向かい大きな黒目をぶつけて言った。
「これ、買ってくれてありがとう」
リネルは驚きの顔をする。「買ってくれて」とは何たるか。女の自分から見ても可愛らしいとしか形容のしようがないシズクを見つめた。一方のイルミは表情を変えぬままシズクに言った。
「どういたしまして」
リネルは苦笑いを浮かべた。