第69章 休日デート/ほのぼの
合流して一緒に探すべきかとその場を立ち上がろうとした瞬間、後ろから髪をツンと引っ張られた。
「…………っ」
気配を一切感じなかった。
一体何者かと焦りを感じていると、よく知る声が聞こえてくる。
「リネルじゃん」
「……シャル?!」
「おお、今日はまたオフモードって雰囲気にイメチェンだな。多少は警戒しろよ」
「何してるか」
「フィンクスにフェイタンまで……」
振り返るとそこにはシャルナーク、フィンクス フェイタンの姿があった。3人はひらりと身を浮かせ、リネルのいたベンチに腰掛ける。リネルは砕けた様子で 隣に座るシャルナークに話し掛けた。
「何してるの こんな所に欲しいお宝でもあるの?」
「いや、今日は遠足みたいなモンだよ」
「どういう事?」
「今日シズクの誕生日でさ。ここで普通に遊んでみたいって言うから連れてきた」
シャルナークはこの場に全く違和感のない爽やかな笑顔でそう答えた。
横からはフェイタンが鋭い瞳をしながらリネルに居合わせた目的を聞う。それに対し「久々の休日だから夫婦揃って遊びに来た」と早口で答えた後、少々気になる疑問を投げた。
「あれ?…そのメインのシズクちゃんがいないじゃん」
「大勢だと目立つね。何組かに別れて回てるよ」
「…なるほど…」
フィンクスはいつの間にか隣の自動販売機で缶コーヒーを購入し、その1本をリネルに手渡し 面白がるように言う。
「盗みや殺しなしでこういう場所で普通に遊ぶって事は慈善活動みたいなもんだし今日の参加は有志だけどな。とにかくお前らのデートの邪魔はしないから安心しろよ」
「ん……ありがと」
缶コーヒーの蓋を開けながら あの幻影旅団が今日は本当にただ遊ぶ事が目的なのかと少しの感心と疑念を覚えた。
隣ではシャルナークがフィンクスに 「来る前にATMから無理矢理金を奪っておきながら何を偉そうに言っている」と突っ込みを入れているのが聞こえた。
リネルはしばらく前のパーティーを思い出していた。
またクロロはシズクとデート同然に遊園地を回遊しているのかと思うと やはりチクリとするものがなくもない。この後に及んでまだそんな感情が芽生える自分に心で溜息をつきつつ、彼等と久々の会話を楽しんでいた。