第69章 休日デート/ほのぼの
「…楽しみにしてたんだから、今日は仲良く穏便に過ごそう?」
「わかってる」
「じゃ、行こっか」
仕事の時とは全く違う表情をしたリネルは、イルミの目には今日はやたらと幼く見えるようだ。
「子供みたい。リネル」
「…私 一応成人してるし大人だよ。大人料金払ったし」
穏便に、穏便に、リネルは口をつぐんだ。
園内に足を踏み入れるや否や リネルは入り口でもらったガイドを広げた。
「よし。まずお土産買おう!」
「は?いきなり?」
「帰りはお店混むし。はい イルミはこれお願い!」
いつの間に用意したのかリネルにメモのような物を渡される。それを見ると イルミの脳内にいつかの旅行の記憶がよみがえった。
また土産に指定でもあるのかとリネルに聞けば、そうではなく 人気の物はすぐ売り切れるから先に購入すべきだと得意げに話しだす。
さらには家族はもちろん、激務続きでこんな場に遊びに来られない職場の人間にお願いされた土産も購入対象だと言う。
「…………」
「なに?どうしたの?黙り込んで」
イルミは呆れを覚え 無機質なる目でリネルを見る。
ハンター協会の中枢にいる人間でありながら何故わざわざ人混みの中、自ら買い物をせねばならないのかと思ってしまう。
「面倒だし取り寄せたらいいのに」
「この場でちゃんと買うのが雰囲気出ていいんだよ。じゃ、まず手分けして買っちゃお、終わったらあのベンチ集合ね」
1人楽しそうなリネルは笑顔で言うと近場の店に入って行った。
いきなり別行動とは 何のために一緒に来たのかと聞きたくもなるが とりあえず言われるままにイルミも土産物を見に行った。
数十分後。自分の担当する分の買い物を全て終えたリネルは待ち合わせに指定したベンチに腰掛け 足を組んでいた。
自分もこういう場に精通しているわけではないが それ以上に不慣れそうに見えるイルミの事を考えれば少し時間がかかるのも仕方ないかとも思う。