第66章 繋ぐ
「リネル それ癖なの?」
「ん?」
「酔うと語りたがるの。あと甘えるの」
「…………」
リネルは 少しの眠気を誤魔化すように イルミの長い黒髪の毛先に指を絡ませていた。
癖 と聞かれると、そうなのかもしれない。
普段そんなに酔うことはないが今日は稽古で身体を動かした後であるからかアルコールの回りが早いようにも思える。
そういえば昔はクロロにも 酔ってワガママを言ったり甘えたりしていた事をどこか懐かしく思い出していた。
そんな考えを制止するように、体温の低い手でやんわり頬を撫でられた。その感触がえらく心地よかった。
「…ん~ 語りはともかく。甘えられるってコトはイルミに心を許してるってコトじゃないかな?」
「隙ありすぎ」
「イルミにしか見せないよ」
「どうだか」
イルミは相変わらずしらりとした顔のまま、強い酒を時折口に運んでいた。そんなイルミを見上げながら 頬を撫でるイルミの手に自身の火照る手を重ねた。
「……ん」
「なに?」
「……イルミの手、気持ちいい」
「そう」
「うん。…」
触れられていると つい先日の行為を思い出してしまう。イルミは 急に熱っぽい色を宿すリネルの瞳見下ろした。
そして前屈し 思い切りリネルに影を落とす。
元より身体は柔らかいが故、距離がぐっと近づいた。
「リネル 何考えてる?」
「……別に」
下手に泳ぐ目線を見逃す筈もなく、イルミはリネルを引き起こす。
頭からふわんと足先に熱が逃げる感覚を得た。視線がぶつかる、そっと瞳を半分ほどに閉じれば 顔が一気に近くなってゆく。
「あ、…待って、私まだ、ちゃんとお風呂入ってない…」
「オレも。一緒に入る?」
「え…それは、さすがに。………恥ずかしいし…」
「もう何度も見てるよ」
至近距離で見つめ合いながら イルミは至って真顔で言う。
頬に添えられた手が 耳と首筋をしっとり辿ってゆく。
「………っ」
赤い顔をしたリネルは照れた様子で視線をそらした。