第66章 繋ぐ
「でも実際は1人じゃなくて…色んな人に支えられてたなって。励ましてもらったり、応援してもらったり。イルミにだって仕事依頼出来て助かってた訳だし」
いつになく語り口調のリネルをイルミは横目で見ていた。
リネルと酒を呑むのは2度目、1度目は数ヶ月前 母の計らいで半ば強制的に指輪を買いに行った夜だ。
思い起こせば あの時も語り口調で人生についてなど大げさな事を言って悩んでいたように思うが、今日はあの夜に比べると随分満足気な顔をしていると思えていた。
「私もっと 色んな人に感謝しなくちゃ!」
「リネルはしっかりして見えて危なっかしい所あるからね。あと割と努力家ではあるから周りが世話焼きたくなるのかもね」
「……それ褒めてくれてる?」
「そう聞こえた?ようは信頼度が低いって事だけど」
「すぐそういう言い方する……。 信頼は出来なくても心配でも危なっかしくても、みんな力を貸してくれていたのかと思うと、なんだか嬉しくて」
「それってフォローとか、とばっちりの回避 とも言うと思うけど」
「もう!意地悪だな言い方!」
リネルはイルミの顔を覗き込んだ。
「……ふふっ」
「?」
「ハンターやる上で大事なこと」
「大事なこと?」
「“人脈や仲間は大事”って本当なんだなぁって」
「なにそれ」
「昔言われたの。尊敬してる先輩に」
さすがはジンだ。
巡り巡って本当に、心から腑に落とすことが出来た。
にこにこしながら笑った後、口から自然と言葉が出た。
「運命ってあるのかもしれないね」
「さっきは信じてないって言わなかった?」
「うん 普段は。……でも今夜は、ちょっと信じたい気分」
手元のお酒をテーブルに置くと ソファに身体を仰向けに倒し 甘えるようにイルミの膝に頭を預けた。酒の回る頭はくらんと心地よいとろみを演出してくれる。下から見上げてもイルミは涼しくも素面のまま、それもまた妙に安心出来る。
イルミは不思議そうに少し目を見開いた。
「なに?それ」
「イルミの膝枕」
「好きだよね。ゴロゴロするの」
「ダメ?」
「別にいいけど」
イルミはリネルの頭を指先でするんと撫でた。