第7章 訪問
こういう場合、気に入られるならまずは母親だろう。イルミはお見合い結婚までを斡旋される箱入り息子であり 仕事の腕も申し分無し、母からすればさぞや自慢の存在だろうか。
そうは思えど 実際はその隣に堂々たる姿勢で立つ 父親の方が気になってしまう。
強靭な鍛錬を醸すオーラは相当な使い手だという事がわかるし、目の前にいるだけで凄まじい圧力を感じる。
一瞬身構えたリネルの様が知れたのか、シルバは早速本題を切り出してきた。
「リネルさんと言ったね。ハンターだそうだな?単刀直入に言うが今からキミの実力を見たい」
「え…?!」
露骨な言葉に目を見開いてしまった。イルミは顎に片手をそえて、納得するよう呟いた。
「ふーん やっぱり。親父らしいね」
「構わないな?イルミ」
「うん。いいよね?リネル」
この雰囲気の中ではノーと言えるわけもなく、了承するより他ないではないか。
まさかとは思ってきたが 本当にこのまま殺されてしまうのではないかというマイナスな感情を打ち消すよう、リネルは拳を握り返事をした。
「はい。わかりました」
「では手合わせをお願いしよう」
場の空気感は一気に緊張を深くする。そこに不似合いな高い声をキキョウが横から挟んでくる。
「もう、男の人はすぐにそれなんだから。リネルちゃんゴメンナサイね?お付き合いをお願いするわ?」
「いえ…こちらこそ、最善を尽くします」
「ほほ、ねぇあなた お手柔らかに」
包帯で顔を隠す違和感はともかく。現時点ではにこやかな様子の母親の方に好印象を抱きながら、リネルは大柄の体躯を部屋のドアへ進めるシルバとイルミの背中に着いて行くしかなかった。