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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第66章 繋ぐ


イルミは目の前の楯を指差した。

なぜそんな写真を見ているのかと問えば、せっかく貰ったものだし写真を撮ることは珍しく 大事な思い出だからと リネルは笑顔で答えた。

酒のせいか普段よりも素直で朗らかにしているリネルは、明るく笑いながらからかう声を出してくる。


「私、いざ露頭に迷ったらこの写真売るから。担保として大事にするね」

「どういうこと?」

「この家の家族の写真には懸賞金がつくから。私ならその手のルートでうまくさばけると思うし」

「そういうコトね」


平然と言ってはいるがリネルはご機嫌そのものだ。
嬉しそうに楯を見つめている。

以前と変わらず2人でいると会話が盛り上がるというわけではない。しかし前は気になっていた 時折訪れる無言の時間も 今では殆ど気にもならなくなっている事を不思議にも嬉しくも感じていた。


「はああ〜〜美味しい〜〜っ」

「それは良かったね」


隣には当たり前にイルミがいる。
いまだに不思議と思う時はある。

今夜は 妙に夢見がちな気持ちになるのは酒のせいもあるかもしれない、リネルはふわふわする頭でそんなことを考えていた。


「ねえ」

「なに?」

「イルミは運命ってあると思う?」

「運命?」


唐突に投げられた質問に イルミは少しの間を置いた。不確定要素の強いこの手の事情の可否は、聞かれた事もなければ考えた事もない、それが正しい答えではあった。


「どうかな、わからない。なんで?」

「私もわからないし信じてる訳じゃないんだけど……」


先刻 ゼノに聞かされた事実に今宵ばかりは運命なるものを信じてもいいかと言う気持ちにもなってくる。
自身のこれまでの生い立ちを思い出していた。


「……私ね」


リネルはゆっくりイルミに声を掛けた。


「早く一人前になりたくて。そればかり考えて今まで生きてきた。1人で生きていく力が欲しくて、1人でも生きていけるって思ってた」


身寄りもなく決して楽な人生ではなかったと思う。
反骨するように芽生えた自立心、そして それを支えてくれた人達、関わってきた人達が大勢いた事を 頭に思い描いた。



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