第66章 繋ぐ
その後。
「…わ、いいお酒」
リネルは自室にて1人ロックグラスを傾けていた。
熟成もののそのウイスキーは 稽古で疲労した身体に程よく染み渡り ほろ酔いに気分をよくしていた。
稽古の後、ゼノはリネルに稽古に耐えた褒美だといい 高級ウイスキーの酒瓶を差し出した。
聞けば得意先から貰った物だそうで「折角なのでご一緒に」と誘ってみた所 それをあっさり断られてしまった。明日には一件仕事が入っていて 仕事の前日は呑まないのが一種の願掛けのようなものだと言い 笑って見せたゼノの顔を思い出していた。
ボトルの形やガラスの質からして洗練されている高級酒をグラスに注ぐと、とくとくと小気味いい音がする。
派手に身体を動かした後であるからか 気持ちも妙に清々しかった。
「やっぱりサイズ合わないな」
ふっと笑い そう述べて、ボトルの隣に目を向ける。
そこには 先日ダブルライセンス取得のお祝いだと言い パリストンがくれたバスケ監修らしいキラキラ輝く綺麗な楯。
その中にライセンス証明書ではなく 先程 2枚の写真を挟んでみた。1枚は先日キキョウにもらったクリスフォード同行時のもの、もう1枚は新婚旅行の時に指定された記念写真。元々写真立てでもないので 見事に空白スペースが出来てしまっていた。
「ま、いっか。写真増えたら足せば」
何故か不思議と、根拠もないのに今後また写真が増える予感があった。満足そうに そう呟き 目の前の写真を見つめた。
今日は美味しいお酒もあるし、楯に収まる写真を見てるのも悪くない。グラスを口に運びながら そんな事を考えていた。