第65章 事実
「この家ってとにかくキルアを中心に回ってるんだと思ってましたけど…可愛いんですねイルミの事も」
「キルは立場的に仕方なかろう。それを除いても孫は皆可愛いに決まっとるじゃろ、長所短所含めてな。あれは初孫じゃし色んな思い入れもある」
「そっか…なんかいいですね そういうの」
「なに、今はお主も孫同然じゃよ?」
ゼノは「 依頼一回タダで受けただけで安いもんだ」と笑顔を見せる。
その台詞がリネルの胸にあたたかく響き つられるように笑顔がこぼれた。
「ま、きっかけを作ったのはあのジジイじゃがの。案外成るようにしてお主は我が暗殺一家に来る事になったのかもしれんのう。主らの出逢いもその後の関係を繋いでいたのも 我が家の生業じゃしな」
その言葉を聞き、リネルの頭に ある仕事の夜の事がよみがえった。
「……そういえばプロポーズされたのも暗殺の仕事現場でした」
「ほう それは面白い」
ゼノはクツクツと喉から満足そうに笑って見せた。
「運命ってのはあるのかもしれんのう」
「んー…どうでしょう……、でも」
リネルはふっと笑みを漏らした。
「キキョウさんが聞いたらお好きそうだし喜びそうなエピソードではありますね」
「確かに」
「内緒にしといて下さいね。根掘り葉掘り聞かれちゃいそうだし」
「もちろん。…あれもいい嫁なんじゃが少しばかり話が長いしの」
2人は顔を見合わせて笑った。