第65章 事実
「………ネテロ会長?」
ゼノは少し呆れた顔を見せた。
「なんじゃあ 気付いとらんかったのか」
「全く……。お友達だったとは知りませんでした」
「考えれば簡単にわかるじゃろ、やはり少しツメが甘いの。長く生きとると色んな所に知り合いが増えるんじゃよ」
ゼノは ネテロからの依頼で 「ある新人の暗殺の手伝いをお願いしたい」と頼まれ、たまたまそれをイルミに投げたのだと話して聞かせた。
「なかなかに筋のある美少女だから いずれ孫の嫁にでもどうかとな、さすがにあのジジイも冗談半分だったとは思うが」
「…こういうやり方あの人らしいけど…」
「結婚報告の時にハンター協会と聞いてピンと来た、正直ワシも本当に来るとは思っとらんかった」
「………はあぁ~、なんで気づかなかったんだろ。今頃向こうで一人勝ちした顔してるのが目に浮かぶなぁ」
ネテロの狙い通り 手の内で躍らされ、まんまとそこにおさまってしまったような 悔しい心持ちがして リネルは大きな溜息をついた。
思えばあの時は疑問点がいくつかあった。
普段では指定のない日時の細やかな指定や、例の仕事をリネルにやらせる事に乗り気でなかったパリストンが 決定事項だと肩を落としていた点も ネテロからの命令であったとしたら納得がいった。リネルは少し口を尖らせた。
「あの時 報酬を請求されなかったのもおかしいとは思ってたんですよ、あとあと言ったら利息付きで請求されそうだから自分からは言わなかったけど。…ネテロ会長のお願いだったからですか?」
「そういうことじゃ」
「お金なしで請け負う事もあるんですね。知らなかった」
「うちも商売、相手によっては義理や人情も大事じゃろ」
「あ!同感ですそれ!イルミにも言ってやって下さいよ~…」
呆れたような声で言うリネルを見返し ゼノは小さな溜息をついた。
「そうじゃなぁ…責任感が強く 稼業の事を1番に考えておるのはいいがのう、情で動いてもらわんと困る事もあるし イルミは少し融通が効かんのが難点じゃな」
「え…」
「思わんか?シルバも時々こぼしとる」
「まぁ…」
「その辺は少しばかり心配なんじゃよ」
リネルはぽかりと口を開けてゼノの言葉を聞いていた。