第65章 事実
数日後。
仕事からの帰宅後、リネルは部屋で一冊の本を読み終えた。
次の仕事に数日はかかると話していた通りイルミはしばらく不在であり、時間がある時は読書に時間を使っていた。
読み終えた本と部屋に置いてあったその他数冊を手に、ゾルディック家の書庫へ向かった。
また何か次なる本でも探そうかと 足を踏み入れると見覚えのある小柄な背中が見えた。
リネルが声をかけるよりも先に ゼノは驚く様子もなく静かに振り返り リネルに話し掛けた。
「リネル、お主か」
「ゼノおじいちゃん!また会いましたね」
リネルは笑顔でゼノの隣に並んだ。ゼノが手元の本を閉じると2人は世間話と言える他愛ない話を始めた。
すぐに話題は仕事の話にすり替わる。リネルがイルミの仕事に同行した日の事を聞かれ 記憶喪失になった事や幻影旅団に遭遇した事を話せば、ゼノは後遺症ないかと心配をしてくれたり、旅団の頭の若造は相変わらずかと懐かしそうにリネルに質問を投げた。
クロロがゼノと闘った事があると話していた事を思い出しつつ答えを返していると、ゼノはふと違う話題をリネルに投げてきた。
「……そういえばお主は今でもやっとるのか?ハンター協会の暗殺の仕事」
「ええ たまには。正確には依頼出しちゃう時もありますが」
「そうか」
「……あれ?私おじいちゃんに話しましたっけ?そんな仕事してるってこと……」
リネルは不思議そうに瞳を丸めて見せた。イルミが話しているとすれば知っているのも頷けるかと考えていると ゼノは意味深に笑みを浮かべた。
「直接は聞いとらんがな。元々ワシはお主の事を知っておる うちへ嫁に来るずっと前からの」
「…え」
「お主らの出逢い、覚えとらんのか?」
「覚えてますけど…」
ゼノの言葉に 数年前のイルミとの出逢いの場を思い出す。
自身に舞い込んだ暗殺の仕事をこなすべく現場に向かうと、イルミとはそこで偶然と言えるような出逢い方をした。
その時 何故そこに居合わせたのか、どこか食い違っていたような 変に噛み合っていたような 互いの主張を思い出した。
「あっ!」
ふと頭の中で一本の筋が通る。
そして 脳内に一人の人物の顔が浮かんだ。