第64章 翌日
ツボネがゾルディック家に帰宅すると キルアはすぐにツボネに声を掛けた。
「さっきはサンキュー!間に合った?」
「ええ、もちろん。キルア様はあの子にお優しい事ね」
「別にそんなんじゃねーけど」
ふいと顔をそらすキルアに ツボネはきっぱり告げた。
「でも2度とこういう事は引き受けません事よ」
「は?なんで?……リネルに厳しくね?」
「ゾルディック家の嫁である以上その辺の良識は持っていただかないと」
キルアは何故か嬉しそうに話すツボネを見ながら 過去に散々細かく躾けられ、叱られた事を思い出していた。
「…おい あんまり厳しくすんなよ。リネル仕事とか色々大変なんだし」
「甘いですよキルア様、ゼノ様も奥様もあの子には随分甘いようですが」
「いじめんなって!」
「いえ むしろ逆ですよ、あたしゃ元々仕事に燃える女は嫌いじゃございませんし…」
「は?そうなの?」
「ええ、もちろん。それにリネル様は見た目よりも骨がありそうじゃありませんか」
ツボネは先ほどリネルが見せた勝気な笑顔を思い出し 自身も笑顔を見せた。
「あの子がキルア様の嫁であったなら更に厳しく躾けて差し上げたのに。残念な事ね」
「…な、何言ってんだよ!」
「いえ、年寄りの戯言ですよ」
「何なんだよ…」
目線を下げるキルアの携帯電話が急に激しく音を立てた。キルアは画面を見るなりうんざりした顔をし、派手に騒いでみせた。
「だーーーー!もう!うっぜぇっっ!!」
「どうなさいました?」
「母親!!リネルが寂しがってるだの心配だのうるせぇんだよ、イルミは忙しいからオレに構ってやれとか何とかさ…言われなくてもわかってんし。今日だってそれで様子見に行ったんだしよ」
「おやおや。キルア様の手まで煩わせるとは 奥様は本当にリネル様を甘やかし過ぎだね」
ツボネは呆れ顔で溜息をついた後、嗜めるようにキルアに話した。
「奥様にご連絡なさいな。“その心配はご無用”と」
「え?…ああ」
「ヘソを曲げた女のご機嫌取りなんて面倒な事をキルア様がやる必要はございませんよ。それはイルミ様のお役目でしょう?」
ツボネは意味深に笑顔を深めた。