第64章 翌日
リネルには理解出来ない速さで ツボネはあっという間にハンター協会本部に到着をした。
「…瞬間移動並みのスピードですね…むしろ余裕で間に合っちゃいました」
「それはそれは」
「でも結構オーラ使うなぁ、…慣れないし疲れた…」
「情けない事を仰いますな」
すぐに元の姿に戻っているツボネにリネルは頭を下げた。執事達の中でも上に立つツボネが早朝であるこの時間帯に暇とも思えず 素直に感謝を述べた。
「お忙しい所本当に助かりました!ありがとうございます」
「いえいえ、ご命令ですからお礼など必要ございません」
「でもありがとうございます!あ、では私はこれで!」
リネルは踵を返しその場を歩き出した。
「リネル様」
後ろから耳に響く厳しい声で名前を呼ばれ リネルは振り返った。ツボネはにこやかな笑みを浮かべている割には毅然とした口調で話した。
「お寝坊の理由はあえて聞く気はございませんが、大人の女性であるならば公私はきっちり分別なさいませ」
「えっ……」
身体に残る痕は隠れる服を着ている。それなのに何か勘付いている風な言い回しに少し焦った顔をみせると ツボネはますます笑顔を深め低い声を出した。
「これはここだけの女同士の密話、もといアタクシの独り言でもありますが…」
「…?…はい、」
「あの家でやっていくご覚悟がおありなら イルミ様くらいは手の内で転がせるようにおなりになられたらよろしいかと」
毅然と言うツボネのその雰囲気がどこかビスケにも似ている気がしていた。
意味深な言い方をするツボネに リネルは 間をおいてから 勝気な笑みを見せた。
「そうですね……近々にはそうなれるよう努力するつもりです」
「ほほ、行ってらっしゃいませ」
ツボネは笑顔のまま リネルに頭を下げた。