第64章 翌日
翌日。
「……、」
リネルはハッと目を覚ました。
普段よりも空がかなり白んでいる事に部屋の時計に目を向けた。いつもの場所にそれが見当たらない事に 昨晩はイルミの部屋で寝た事、無事に話合いに折り合いがつき 同じ夜を過ごした事を思い出す。
リネルは隣に眠るイルミに目を向けた。
気持ちも通じ合い甘い夜を過ごした後だというのに 普段と変わらず背中を向けて寝ている様は相変わらずだと思う。
しかし今日はその広い背中が妙に可愛らしくも愛おしくも見え、口元だけを綻ばせた。そして身体を起こし ベッドから出ようとした。
「リネル」
「……えっ」
急に腕を強く引かれ その反動で再びベッドへ引き込まれた。抑えるように後ろから両腕を回してくるイルミに、リネルは驚きの声を出した。
「わっ!!……起きてたの?」
「どこ行くの?」
「どこって…仕事に決まってるでしょ」
「リネルも好きだよね仕事」
「それをイルミに言われたくないけど…っ」
後ろから首筋に触れる唇の感触に昨晩の事を思い出し 顔が熱くなるのを感じた。身体を重ねるのはもう何度目かになるし今更ではあるのだが 昨日のように気持ちの意思疎通をした上での行いは当然初めて。
しかしそれに酔いしれている程時間がない。イルミから逃れようと ジタバタと抵抗を繰り返した。
イルミはリネルの胸元へ簡単に手のひらを滑らせると 服の上からそっとそれを撫で上げた。
「や、……朝から…何するの!」
「というよりも朝だから」
「知らないよ!!離して!仕事なんだから!」
イルミは服の上からリネルの胸元を柔らかく弄りながら 耳元で低く囁いた。
「覚えてないの?昨日の事」
「覚えてる、けど…っ…」
身体に触れられていると昨晩の事情を思い出し、つい抵抗する事を忘れてしまいそうになる。
気付けば簡単に馬乗りになられ イルミの乱れた服の胸元から覗く 自分がつけた赤い痕が より鮮明に数時間前の行為を思い出させた。