第7章 訪問
「だって何も言ってくれないから何着たらいいのかわかんなくて……え?マズイ?服装から審査される?」
「ま、いいんじゃない?リネルっぽくて。違和感はない」
「…………」
「時々来るしねそういう人。保険の勧誘って言うの?うちはかなり上顧客らしいから」
「…………今日は保険の話ではなく結婚前のご挨拶の認識だったんだけど」
「うん。認識は合ってるよ」
適当な言葉を返すイルミは大きな門の前まで歩みを進める。リネルはそれについて行った。
拳で門をコツンと叩き、イルミが言った。
「試しの門て言うんだけど、リネル開けれる?」
「……どうやって?」
「力入れるだけ。リネルなら多分いける」
リネルは言われるままに試しの門に近付いた。両手を添え、グッと力を込めてみる。
なるほど、感触的にはいけそうだ。とリネルは思う。
「ん…!…」
さらに力を強くすると扉が鈍い音を立てはじめる。ゆっくり重く動いてゆく。
リネルは扉を両手で押しながら イルミの方を見て聞いた。
「……いちお聞くけど。これ、もしも開けれなかったら?」
「家に入る資格はないってこと。だから試しの門」
「……ふーん」
想像通りの答えに半ば飽きれつつ、リネルはそのまま扉を開けきった。
後ろからイルミがついてくる、2人は敷地内に入っていった。
1の扉までを開け無事に第一関門を突破した。イルミが説明を加えてくる。
「片方2トン。7まであって、ひとつ増えるごとに倍の重さになってるんだけどリネルならもっと開けれるんじゃない?」
「ん……でもこれから何が起こるかもわかんないし 余計な体力使いたくないから」
「賢明だね」
扉の中は広い森だった。
リネルは回りを見渡した。
すぐに獣の息遣いを感じリネルは身体を緊張させた。目の前に現れたのは大きな犬、それを見るや否や リネルはイルミの後ろにさっと身を寄せた。
「大丈夫。門から入れば襲ってこない、ミケって言って家の番犬」
「…番犬ていうか…」
「なに?」
「……魔獣?……」
「魔獣よりは優秀だよ。訓練されてるし」
イルミはあっさりそう言うと、さくさく先を急いでしまう。