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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第63章 翻弄


わからないなんて曖昧な言葉は、稚拙な嘘だ。それを咎めるように イルミはリネルのほんのり汗ばむ首筋に唇を寄せ そこをきつく吸い上げた。
首元にちくりと走る感触に従い、リネルはイルミを制止する。


「やだ…痕つけないで…っ」

「どうして?」

「やだ、いつも……私ばっかり」

「リネルもつけたいの?オレに」

「……え……」


つけたいと思った事は無かったがそう問われると そうしたいと思うもの。日頃から表情もペースも乱さぬイルミに自分の印を残せるのなら不思議な優越感を得る。

リネルの無言は肯定だ。イルミは体制を仰向けに変え リネルの身体を自身の上に引き寄せた。変わる景色を楽しむよう互いにしばし見つめあった後、リネルは小さく首を傾げた。


「……いいの?」

「いいよ」

「……仕事には支障出ないし?」

「うん」


くすりと笑った後、リネルはイルミの首元に視線を向けた。
嫉妬を覚える程になめらかな肌と浮いた鎖骨に目を這わせつつ、それに不似合いな逞しい喉仏が目に留まる。愛おしむようにそこへ唇を落とした後、鎖骨の上あたりに唇を押し当て 同じように吸い上げてみる。
それが思いの外うまくいかない事に、ちらりと視線を上げてみる。


「……見た目よりもお肌が丈夫なのなかぁ」

「かもね」

「もう少し強くしてもいい?」

「いいよ」


リネルは少しと 言っていたが。刹那、まるで噛み付かれるような狭く鋭い痛みがイルミの首筋に走った。痛みくらい気にもならないが、負けじと必死になる姿がいじらしく見え リネルの髪に指を絡めて丸い後頭部を撫でてやる。





「……痛かった?」

「少しね」

「……ごめん……」

「いいよ。やりたかったらもっとつけていいし」

「もういい……満足」


リネルは、指先で赤い痕をするする撫で ふわりと微笑んで見せた。もう一度顔を近づける。そして、唇が触れそうな位置で甘える掠れた声を出した。


「…キス…しよ」

「いいよ。お好きなように」

「…………」


薄く開かれるイルミの口内に自身の舌をゆっくり押し入れた。攻めるのは自分であるのに すぐに余裕がなくなってくるのも自分、呼吸がまたすぐに乱れ いよいよ本格的に下半身が熱く疼き出すのを感じていた。
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