第63章 翻弄
濡れた目元で 切なげに見上げてくるリネルの身体に視線を落とした。
ショーツ一枚のみ纏ったその身体は 細やかだが均整のとれた美しさがある。人形のように長く伸びた脚線を何度か撫でるとその度にリネルは小さく身体を揺らし、程よい大きさの胸が合わせるように甘美に震える。誘うように心臓の上で 上下している愛らしく色付く突起に唇を寄せた。
「……っ、」
「リネルは綺麗だね」
「えっ…、」
◆◆
初めて言われた気がするその言葉にリネルは驚きの声を出した。
急にそんな事を言い出す理由を問いたいとも思うが、胸元を淫らに弄ばれていると高揚する気持ちが勝り 今の事情を進める方が先決だと思えてくる。
「…んっ、…イルミ…」
「…なに?」
イルミは満足そうに、腰のラインを撫でてくる。イルミのはだけた寝衣の胸元にそっと両手をかけた。
「…イルミも、見せて」
「いいよ。」
イルミは身体を起こし 腰元の紐を片手で解いた。リネルは両手で衣服を落とした。
薄暗い部屋に浮かぶ身体を見つめる。
一件、細身にも見えるがイルミの身体は完成されている。筋肉がつき鍛えられた身体こそ 女の目から見ても綺麗だと思った。
何度も抱かれた事もあるその肢体が 急に官能的に見え、これからされることを頭で想像すれば 何度も快感を刻まれた身体がそれを簡単に思い出す。それだけで、鼓動が高鳴るのを感じた。
「……ドキドキする……っ」
「今更?」
「イルミは……しないの?」
「ドキドキはしない。けど」
「……けど?」
答えを探るよう、イルミはリネルの胸元に両手を伸ばした。
指先は器用に胸の突起を刺激する。そうすれば容易く、リネルは上気した顔を更に切なげに乱してくれる。
どこをどうすればどう反応するか、どういう顔をするか。
今は何を考えているか、何を欲しているか。
普段 自分の望む型には到底当てはまらないリネルを思い通りに動かせる。支配欲とも言える感情を満たせるこの瞬間は 決して悪いものではない。
「…っ…けど、何…?」
「今はリネルの事だけを考えてる」
「…ん…、そっか…」
「リネルは?」
「……………わ、…わかん…ない」