第61章 連絡
そんな折、部屋に近付くある気配を察し、リネルは思い切り顔を上げた。ノックの音と共にようやくイルミが部屋に顔を出す。
カルトは驚く様子もなく、イルミに一番に声をかけた。
「兄さま おかえりなさい」
「ただいま。珍しいね カルトがリネルの部屋にいるの」
「はい。リネルが兄さまが帰らないから寂しいと拗ねていたので 話し相手をさせられてました」
「私、話し相手を頼んだ以外にはそんなこと一言も言ってないよね!」
リネルの言葉は完全に無視をしたまま カルトはソファから立ち上がった。音もなく静かにドアに向かい、親子程の身長差のあるイルミを下からじっと見上げた。
「…………………」
「なに?」
「いえ。完璧な人間ていないものだなーと思いまして」
「何の話?」
「何でもないです。あとは兄さまにお任せしてボクはこれで失礼しますから」
「そう」
「今宵もお疲れさまでした」
カルトはイルミにぺこりと会釈を見せた後、リネルの部屋を去っていった。