第61章 連絡
ドアを開けると予想外の人物がそこにいた。
リネルは拍子抜けした声を出す。
「なんだー カルトか~」
「なんだで悪かったね。言っておくけど別に来たくて来たわけじゃ…っ」
久々に会うのに相変わらずの態度と口調を見せるカルトは、上目遣いにリネルを見つめ、からかうように大きな瞳を細くした。
「今さ、何かぶつぶつ言ってなかった?」
「えっ……」
「独り言とか、こわい」
「別に、独り言な訳じゃ…っ」
どちらかと言うと愚痴だ。そう言い訳をするリネルに対し、カルトはにんやり口元を曲げていた。
「待ってるって、何を待ってるの?」
「うわ…聞いてたの?…」
「まあね。ボク耳はいいから。イルミ兄さんのこと?」
「……だって、帰るって言ったくせに帰らないんだもん」
「兄さんが帰るって言ったなら帰ってくるよ」
絶対的な兄への信頼は潔く、今のリネルには有難いものがあった。リネルはそんなカルトに頼むよう、少し高い声を出す。
「あ、じゃあイルミが帰るまでちょっとお喋りでもしない?」
「え」
「1人でいるの退屈で」
カルトは大きな目を半分程に細めている。キルアに比べるとカルトは随分ポーカーフェイスだが、こうして見ると表情が多いものだとも思う。
「ボクはリネルみたいに暇じゃないんだけど」
「え、暇そうじゃん。今」
「集合あったから出てたよ。たまたま今帰ってきただけで暇ってわけじゃない!」
「はいはい…とにかくさ、ね?たまにはカルトとお喋りしたいな~」
膝を折り カルトに笑顔を向ける。カルトはじっとリネルの顔を見返してくる。
「………リネルさ」
「ん?」
途中で言い黙ってしまうカルトは、諦めたように大きく息を吐いた。
「まぁいいや。兄さんも忙しいしどうせ寂しいんでしょ ちょっとだけだよ」
「寂しいとは言ってないけど。でも、ありがとカルト!」
「……ほんとにちょっとだけだからね」
ドアを開けて自室にカルトを案内した。カルトはつんと顎を上げたまま、小股で歩いてくる。