第6章 気付き
「じゃあもうこうやって呑みに行く機会も減っちゃうワケか…残念だ」
「そもそも数えるくらいしか行った覚えないケド。てゆうか仕事の話するなら結婚したってその辺は今と変わらないから」
「ん〜 でも気は遣うよねぇ。イルミの奥サマに睨まれたくないし」
「思ってもないくせに」
むしろヒソカはこの突発的報告を楽しんでいる、ヒソカのオーラからそれはありありと歴然だった。ヒソカは両手で頬杖をつき、細目を回してイルミを見る。
「新妻、今度会わせてね」
「ヤダよ。」
「ボクとキミの仲じゃないか」
「誤解招く言い方しないでよ」
しらりと言い放つイルミの前で、ヒソカの携帯電話が震えた。
両者の視線がそこへ下る。ヒソカはメールを確認しながら、ふうと溜息を落としていた。
「…………残念」
「何が?」
「とある情報屋サンからの報告でね。今期のハンター試験に面白い人間いないかなぁーと期待していたんだけど……」
「ハンター試験?」
イルミはふと、ヒソカに目を向けた。
過去に同じくハンター試験を受けた折、果実がなんだと言いながら試験を変な方向で愉しんではいたが 今も尚そんなことに注力していたとは。イルミとしては半ば呆れを覚えてしまう。ヒソカは肩を落としていた。
「実りを待つべき人材は今期はいないって。寂しいねぇ」
「相変わらずそんなの探してるんだ。モノ好きだよねホント」
やれやれ、とヒソカは1人かぶりを振る。そのまま携帯電話をしまうと、アルコールを口に運んでいた。
イルミは数歩でその場を離れた。
「ちなみに誰?情報屋って」
去ったと思いきや、真後ろからイルミに声をかけられた。
イルミが今更ハンター試験に絡む情報を求めているとは考えにくい訳で、ヒソカは意味深に口元を歪め、ゆっくりと言った。
「イルミの所は情報には困ってないだろ」
「まあね。ま、いいや。仕事完了したら連絡するから金はいつもの口座にね」
それだけ言うと、イルミはあっさりその場を離れた。
「…………結婚、ねえ」
これは何やら面白いことになるかもしれない。騒つく予感に、ヒソカは1人ほくそ笑んでいた。