第61章 連絡
「……帰ってきたら何から話そう。また話がグダグダだとイルミいい加減怒るかもしれないし……」
結局のところ、眠れなかった。知らずうちに頭の中ではその件を考えており、ぽつりと独り言を唱えた。
ごろりと身体を返しうつ伏せになる。枕に深く顎を静めて横に置いてある携帯電話に手を伸ばした。相変わらず音を立てる様子のないそれをじっと見つめた。
「……。まずは私から、帰ったって連絡するべきかな……」
自分に言い聞かせるようにそう口にした後、薄暗い部屋の中で、光る画面を見ながら イルミに一件のメールを作ってみる。
ご連絡
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お疲れ様です。
出張が終わって帰りました。
念のためご連絡します。
びっくりする程、可愛げのないメールに自分でも苦笑いがこみ上げた。しかしどうにも加工するテクニックも持ち合わせていない。そのまま送り終えた後、自嘲気味に笑った。
普通はこういう時に、何と送るのが夫婦の正解なのだろうか。検索画面に『夫婦 出張 久しぶりに会う』と試しに検索してみるが、苦笑いが深まるだけだった。
「楽しく過ごす…デート…彼を満足させる…夜の営み…………ああああ~ やっぱ無理だ!ガラじゃなさすぎる!!」
数分間、携帯電話と睨めっこをしながらアレコレ自己つっこみを入れ続けたが、即レスは来そうもない事にまた溜息が出る。
「………何してるんだろ私。こんなのほんとガラじゃない」
本当に、わからくなってくる。
こういう時は考えていても答えは出ないものだ。枕の横に携帯電話を放った。そして、ベッドに深く潜り込みそのまま目を閉じた。