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〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第60章 傷心


ヒソカはさらにもう一歩、リネルに近付いた。


「決着するのならボクの楽しみは少し減っちゃうけどねぇ リネルの悩むトコが見れなくなるとなると」

「知らないそんなの…どっか行ってよ」

「じゃあ見納め。リネルの顔見たら帰るよ」

「……やだ。帰って今すぐ」

「ならこっち向いて」

「……嫌」


リネルの背後にまで距離を詰めると、ヒソカはリネルの頭上から低い声を落とす。


「また泣いてる?ホントらしくないね」

「……泣いてないしっ……」

「感情抑制が下手だし愛情表現も下手。こーゆーコト向かないし似合わないって」

「……知ってるよ……ほっといて」








「リネル」

「…放っておいてってば」

「こっち向いてよ」

「…やだ。どっか行って。ホント放っておいて」

「放っておけないよ。だから来たんだ。」

「………人のこと、モノか何かだと思って面白がってるだけのクセに」

「だってさ、」


ヒソカはリネルの背後から、細い首元に両腕を回し、リネルの頭上にそっと自身の顎先を乗せた。あまりに予想外の展開に、抵抗する事も忘れてしまった。


「大切なモノが壊れそうだったら普通放っておけないだろ。」

「……ヒソカが大事なのはよくわかんないけど、クロロと…イルミなんでしょ、私のことは…放っておいてよ……っ」

「お気に入りにも順位がある。その1番が傷付いてるから放っておかない。簡単だろ?」


よしよし と優しく頭を抱え込まれた。振り払うのは簡単だ。なのに中々身体が動かなかった。


「…別に傷付いてなんか、ない…っ…」

「そっか。そうだね。ならボクの勘違いだ。キミはこんなコトで泣いたりしない強いコだもんね♡」

「…泣いてないしっ、てゆうか、バカにしてるの…?!」

「違う違う。だってボクにはリネルの顔は見えないし」

「……っ、」

「泣いてるかどうかもわからないだけさ」


気まぐれな事をあっさりやってのけるヒソカの本心はどうせ褒められたものではないのだろう。しかしそれでも今は、その嘘が心地よく思えたことも事実だった。







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