• テキストサイズ

〈H×H 長編〉暗殺一家の嫁

第60章 傷心


あれから。

リネルは一人当てもなくぼんやりした心持ちで街中を歩いていた。帰宅する気にもなれず、仕事に打ち込む気にもなれない。吐き出した思いは予想以上にリネルに喪失感をもたらしていた。


後ろから、嫌な気配が近づいた。この捉えどころのないオーラは確実にヒソカのものだ。何故このタイミングなのか、嫌悪感を覚えながらもリネルは低く静かな声で言った。


「……2度と顔出さないでって言わなかった?」

「了承した覚えはないナ」

「ヒソカの顔見たくないんだけど」


ヒソカは普段よりも沈んで見えるリネルの後ろ姿を見つめていた。


「なんだか落ち込んでるね」

「別にそんなことない。」

「オーラが弱々しいし。アレ、もしかしてその様子じゃもうフられちゃったとか?」


ほんの一瞬だけ、動揺した気配を見せるリネルに ヒソカは少し距離を詰めた。


「なるほど。こういうコトに関してはほんとわかりやすいねリネルは」

「……うるさい」

「こんなに早く動くとは思ってなかったケド。そんなに切羽詰まってた?」

「……うるさいってば」

「八つ当たりな気分、てワケね」

「……そんなんじゃない」


ヒソカは溜息まじりに大きく息を吐いた後、声を少し大きくした。


「でもまぁ臆病なキミにしては 頑張ったじゃないか」

「……え……」

「エライね、って褒めてるの」

「…………っ」


まさか、ヒソカからこのような言い回しが出ようとは。慰めにもとれる言葉が胸に染み渡るようで、リネルは喉の奥が熱くなる感覚を覚えていた。





/ 497ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp