第59章 本音の本音

少し無言の空間が続いた後、クロロがゆっくりと言った。


「実はな。イルミが来たんだオレのところに」

「嘘っ……いつ？」

「お前が家出した時。 イルミに傷を付けるなんてやるじゃないか」

「あれはちょっと イラっときて」

「やるようになったな」

「……怒ってたでしょ？」

「そうだな、と言うよりは……困ってた、かもな」

「え？なんか言ってた？」


リネルの質問には答えずに、クロロはリネルに聞いた。


「で、仲直りしたのか？」

「正式には…………まだ」

「喧嘩して家出までしたお前が仲直りも済んでいないのにオレに会いに来るとはどんな了見だ。そして、お前の言うけじめとやらは何なのか」

「…それは、…」


目線を床に落とし黙り込むリネルを見ながら、クロロは 微笑みながらも少し呆れた顔をした。


「一応聞くが、仲直りする気はあるのか？」

「…それはあるよ」

「なら急ぎの仕事が終わった後でここにいる場合じゃないんじゃないのか？」

「…うん。…」

「何故オレに会いに来たんだ？」

「…ええと……」


リネルは口を噤みながら、何をどう話したらいいのか、何をどのように伝えたらいいのかを思いながら、ますます下を向いていた。




「リネル」




急に名前を呼ばれリネルは顔を上げた。



クロロはリネルをじっと見つめながらゆっくりとリネルに近付いた。

しんと静かな広いホールには クロロの微かな足音が響いてた。

クロロはリネルの目の前で足を止めると、リネルを見下ろして言った。





「オレに言いたいことがあるんだろう」

「……そ、それは……」

「言ってみろよ」

「………」

「全部聞いてやる。そして答えも本音で返してやる。」

「…………っ」



クロロは真剣な眼差しを見せていた。

リネルにはその言葉の意図がわかった気がして ぎゅっと目頭を寄せて、クロロを見つめ返した。