第59章 本音の本音
「来たか、リネル」
居場所の連絡をもらってから リネルはクロロが先日に借りたホールにやって来た。
クロロは リネルの姿を見ると顔を上げて 笑顔を見せた。
「昨日は助かった」
「スノークロノス?やっぱり行ったの?」
「ああ。お前の察しの通り黒だった」
「そっか、相変わらずやること早いね」
「お礼に今後お前が余計な念をかけられでもしたら無条件で除念してやるよ」
「それはありがたいな」
リネルは 見慣れた笑みを見せている割に 少しの違和感を感じるクロロの姿を見つめた。
前髪を後ろに流した黒いコート姿のクロロは、リネルの目には少し遠い存在に映っていた。
「私やっぱり見慣れないなぁ、クロロのその格好」
「オンオフは大事だろ 集団行動では特にな」
「……そうだね」
クロロは いつになく沈んだ雰囲気を出すリネルに、優しい口調で言った。
「記憶、無事に戻ってよかったな」
「あ……うん。ごめんね色々迷惑かけて」
「あの件に関してはオレは何もしていない。1番迷惑被ったのも焦ったのもイルミじゃないか?」
「……そっか そうだね」
リネルは クロロの物言いに ぎゅっと胸を締め付けられるような感覚を覚えていた。
クロロは相変わらず笑みを浮かべたまま、視線をリネルから ホールにある数点の品々に移した。
リネルも真似るように それらに目線を平行させた。
「これがクリスフォード邸にあった魔獣の剥製?」
「そうだ」
「随分大きいね……想像以上」
「だな オレも思った。蓋を開けて見ないとわからない事は色々あるな」
くすりと笑みを漏らしながらも クロロは例の剥製を 瞳を輝かせながら見つめた。
リネルはそんなクロロの 昔と変わらぬ瞳の色に懐かしさを感じていた。